あれから数年たった。
 あれ以来、僕らの村には錬金術師が来てはいない。
 あんなすごいことをしてのけたケシュの後釜に座れるほど根性を持った人はまだ居ないらしい。
 この先空を作れる錬金術師が現れるのは難しいだろう。


 それから、僕はレリアスともあの日以来会っていなかった。
 青空は完成していたけれど、それを知らせる前にケシュは死んでしまったから。僕からもそれを伝えるようなことはしていない。
 僕は今、医者の手伝いをしている。
 医者から本を借りて、医学・薬草などの知識を学んでいる途中だ。
 僕は将来錬金術師になろうと思っている。薬草に精通することで、医学と錬金術は似通ったものがあるらしい。今はこの村に錬金術師がいないので、教えられる範囲でと言うことで医者が僕の師匠だ。
 僕は毎日通って、師匠である医者の手伝いをし、薬草の知識を学び、あれから移り住んだケシュの家にあるほんの少しの錬金術に関しての本を読み漁っている。
 そして僕もいつかケシュみたいに青空を作れるようになり、レリアスに見せてあげるんだ。

 今、数年前ケシュが居た病室には一人の少女がいる。
 少女は街へ向かう途中に事故に遭い、家族全員を失って今は此処に、今でも褪せることなく青空の広がる部屋に入院している。
 僕は毎日その少女ために、空の色を写しこんだような綺麗な花を持って行っている。
 少女はいつもうれしそうに笑い、僕のする話を楽しそうに聞いてくれる。僕も彼女の話を聞く。
 僕と少女は、少女の怪我が癒えた後、一緒に暮らす約束をした。つまり、結婚するということ。
 青い空の部屋の中で、僕たちはそれを約束した。
 
 そして、彼女の怪我が良くなったその日。僕たちはケシュが作った青空のように綺麗でキラキラしている空の下で、幸せに暮らすことを、ケシュと、空と、全てに誓った。




              『blue・ブルー・青』おしまい


   
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