うきゃっと笑った弟を兄は困ったように見下ろした。


幼稚園に通っている幼い弟との年の差は十以上。

ぷっくらほっぺをつついてやると弟はむっとしたように俺を見上げていやいやと首を振りまくる。

「そんなに振り回すともげるぞー」
「兄ちゃんがやめればいいんだよー」

柔らかい髪がばしばし手に当たってくすぐったい。


そろそろちびをからかうのをやめて昼飯の用意をしなければならない。
手を遠ざけて立ち上がろうとすると弟が物足りない顔をして見上げてくる。

「どこ行くの?」

まだまだ遊んで欲しいとぷっくらほっぺに書いてある。

「遊ばない?」
「遊ばない」
「えー」
「ちびはお昼ごはんいらないんだ?」
「えー。えー」

不服そうにまた顔を振る。

「何食べたい?」
「ラーメン!」

元気良く即答する弟に思わず笑みがこぼれてしまう。

「よーし、野菜いっぱいな!」
「お野菜いっぱい!」

これまた元気良く繰り返した弟ははっ!として動きを止める。

「セロリはイヤ」
「うまいのに」

「いや、まずいだろ」

キッチンと居間の出入り口の暖簾を潜って、俺の兄が会話に割り込んできた。

「あれ、兄貴居たんだ?」
「兄ちゃん居たのー?」
「悪いか。寝てた」

のろいのそのそとした動きで、家族の中で一番背の高い兄がトゲトゲしい顔でこっちを見ていた。

「食う?」
「いらん」

「好き嫌いはメーなんだよ」

チビが兄貴をじっと見つめるが、兄貴は肩を竦めて財布をズボンのポケットにつっこんで背を向けてしまった。

「結局また俺とちびだけだなー」
「兄ちゃんと俺だけー」
「僕といいなさい」

ぴしゃりと言い返した後、鍋に二人分の水を注いで火にかけた。
食器棚の隣りの棚からインスタント麺を取り出してちびを見た。
目を輝かしてこっちを見上げてくる。
少し距離があるのは火を使っているときと包丁を使ってるときは近づくなときつく言い聞かしてあるからだ。

「しょうゆとみそどっちがいい?」
「・・・・・!ミソーーーー!」

難しい質問だったと言うのに元気良くちびは答えた。



ほのぼの兄弟。
長男長女次男三男の四兄弟
20080529
(20080423)