盛大なパーティの後、デーデマンはぐったりとソファーに座り込んでいた。 お祭り好きな両親を筆頭に、向かいに住むユーゼフとその執事のピーター、この屋敷にもトラブルメイカーが勢ぞろいだ。 デーデマン自身もその一員であるためにクリスマスを祝うパーティーはまるで狂宴といったふうで、一部を除きその後彼等は疲労困憊していた。 アルコールに火照った体に、頭もほんの少し痛む。 ぐったりとしていた使用人達を思い出し、明日この屋敷はしっかりと動き出せるのだろうかと不安になった。 デーデマンが水を求めて唸っていると、頬に冷たい感触を軽く押し付けられた。 「ん、なに・・」 鈍った頭で考える必要も無い。 いつもよりも乱れた様子のセバスチャンが水に満ちたグラスを持っていた。 「飲みすぎですよ、旦那様。」 冷静な声はいつもよりも掠れていた。 セバスチャンからグラスを受け取ろうとも思うのだが、一度休んでしまった体はなかなか動き出そうとしない。 まるで錆びた機械のように軋むこともしない。 そんな様子のデーデマンを見下ろし、セバスチャンは落ちた前髪をかき上げながらため息をついた。 近くに感じるそれは熱を帯びていて微かに酒精を感じた。 さすがに今夜ばかりはセバスチャンも羽目をはずしてしまったらしい。 と言うよりも逃げられなかったのだろうか。 呆っとしているデーデマンに痺れを切らしたようにセバスチャンはグラスを持ったままソファーのデーデマンの隣りにゆっくりと腰を下ろした。 「そろそろ加減を覚えたらどうですか、毎年こんなことでどうするんですか」 呆れたような声にデーデマンは居心地悪そうに身じろぐ。 「だってさあ、ついついのせられちゃって・・。それに一年に一回のクリスマスだよ、楽しまなくちゃ損でしょ」 ぷう、と頬を膨らませる幼い主人をセバスチャンは眩しそうに見た。 「まったく、ほら、水を飲めますか?」 「ん、飲みたい。飲ませて」 酔いに任せて口走った言葉に、セバスチャンだけでなくデーデマン自身も驚愕を見せた。 まったくこの酔っ払いが、と微かな声が聞こえた気がしたがデーデマンに多くを考えている時間は無かった。 唇に触れる感触を突然感じたかと思うと、熱い舌と共に冷たい水が流れ込んできた。 「んっ?・・・っ、ちょっと、セバスチャ・・」 「水が欲しかったのでしょう?」 たしかにそう言ったけど!っとぐちぐち言い出す主人を見下ろしてセバスチャンは微かに笑った。 愛らしい。 冷徹なほどの頭脳を持っていながらも、しかしその柔らかな四肢や子供のような甘い声が、柔らかい光を孕む瞳が愛おしい。 白い滑らかな頬や小さな耳が赤く色づいているのがやけにセバスチャンの欲をそそる。 水を飲ました後にそこらに唇を寄せるたびにデーデマンは擽ったそうにくすくす笑い、セバスチャンの乱れたシャツに小さな手を縋らせた。 いつもだったらシャツに皺が出来ると邪険に振り払うところだが、その子供染みた行為にさえ愛しさが募る。 セバスチャン自身も大概酒に平常心を失っているらしい。 「今夜だけですよ、こんなに甘やかしてあげるのも」 甘く囁き、またデーデマンの小さな唇に自分の唇を寄せる。 「ん・・いつも甘やかして欲しいのに」 「我侭を言うものではありませんよ、それに、いつでも貰える物ではありがたみがないでしょう?」 意地悪に笑いながら言って、セバスチャンはデーデマンの柔らかい髪を優しく撫でてやる。 音の無い夜。 クリスマスに浮かれたような騒がしい喧騒を窓の外の雪が遮ってくれているのだろうか。 視界をも遮る様な雪は二人を現実と外界から遮断してくれる。 冷たさ故の、微かな慈愛。 素直になれない彼らが唯一身を寄せ合うことの出来る夜だった。 end ついに今年も終わってしまいますね、と言うことで年末年始フリー小説です 腐塔に来てくださる皆様に感謝の気持ちをこめて・・・ さて今回の戦セバ小説、上でなんかまともなことを言っていますが、実はクリスマス小説でした しかし私生活もおちゃらけも大概にしろよな安里 間に合いませんでした・・・・・・・・! それを予期してイヴのパーティ後の小説にしてみるとか姑息な手を使ってみる(おい 最初はクリスマス意識していたんでやけに甘々(第一変換尼尼に涙目)になりましたね セバがなんか緩過ぎる・・・ような、甘過ぎる・・・ような きっと飲みすぎですね お酒の飲みすぎには気をつけましょう だって太るもん(滝涙 ちなみにタイトル「よいのあと」は宵の後、酔いの後、漢字をどちらにするか迷った末ひらがなに、みたいな裏話(?)があります これを念頭に読んでみるとまた違った雰囲気に!?一粒で二度おいしい!? って、なりませんか・・・(昨夜のお酒がまだ残っている様子 あ、なんか後が長い、もうやめよう(苦笑) 作品のお持ち帰りは期間中ならばご自由にどうぞ! ただ、ご報告頂けると安里が個人的に狂喜しますので頂けると嬉しいです 背景画像は素材サイトSky Ruins様からお借りしました 背景画像のお持ち帰りはそちらからお願いします 20081225 ← |