シリスのシャツの裾を捕まえてテッドはそれを上へと除けた。

滑らかな引き締まった腹が現れた。
その中心部からはおびただしい血液が、抉られたような醜い傷が赤い血をどくどくと流しながら腹に走っていた。

「この馬鹿・・・」

苦しそうな顔でそう呟き、テッドは痛みに喘ぐシリスの歪んだ顔を見上げながら癒しの術をあたえる。

細めた目の青が綺麗だ、涙を浮かべているその瞳は潤み反射してきらきらと細かく輝いていた。

柔らかい肌に流れる赤がこの上なく無垢で、そして異端に感じる。

だらりと開いた傷口が、おびただしく溢れ出てくるような血液が、まるで誘う女の媚態のようで頭がくらりとした。
血の匂いに当てられたのか。

「テッド・・・っ」

シリスが思わず声を上げた時、テッドはその傷口に顔を寄せ舌を伸ばしていた。舌先に感じる鉄のような嫌な香りが口内に立ち込め鼻孔にまで上った。
普段なら嫌悪感を持つそれはしかしなぜか甘味でテッドはもっとと言うように舌を進ませた。


傷口から進み入る軟かなものを感じ、シリスは大きく体を波打たせた。
「ふぅあ・・・っ」
苦痛に思わず上げられた声はまるであえぐように色付いて聞こえ、それは頭の中を恍惚とする。


押し開くように舌を進め、それは傷口を広げる行為だった。
痛みにシリスは息を詰めながら喘ぎ、テッドはまるでその舌からシリスへ溶け込むようだと感じる。

ずくずくと、深くへ。
粘液が交じり合うその感触が、まるで本当に境界をなくしていくような。

このまま一つになってしまえばいい。
そう感じているのだろうか、切なげな顔を見下ろしてシリスは青い瞳を揺らした。

どうせ死ぬのなら、やはり彼と共にありたい。そう願うのは禁忌だと知っている。しかし気持ちが弱る今、絶望的な幸福を求めてしまう。
焼けるような、滑るような、そんな痛みが腹を抉り、それを与えているのはテッドだ。

手を重ねると、自然と目が合った。

同じような気持ちを抱いてることは、二人とも瞬時に察した。
無理だと分かっているけれど、抗いがたいもの。
君が、好きだから。
そんな生易しい感情でもなく、苦しくてその痛みにのたうちまわるほどだ。

「馬鹿、だよな」

そう言ってお互い近づいて。
距離なんていらない、そう訴えるように口付けるとそこから蕩けだしていきそうだった。
熱が回り、頭が妄っとなって痛みさえもあやふやになっていく。

熱い舌が絡まって、流したものを啜る。舐めるなんて優しいものでもない。

「一つに、なりたい、」

「なれない」

「解ってる」

指も絡めて、脚も、全部全部。



テッドは未だ濡れそぼったままの傷に指をねじ込んだ。
抵抗がある、皮膚の下の熱い、処。

「こっから、入って、一つになりたい」
その言葉にシリスは笑った。痛みなんか感じないように、なのに恍惚な貌。

「無理だよ」

でも、なりたければなればいい。

同じように望むこと、それをお互い理解している。


キスをしたらまだ血の味がした。
体中に、もう滲み込んでしまったのかもしれない。




この傷口が入り口に?


なってしまえばいい、なんにでもなってしまいたい

この身全部で。開いて、迎え入れて、僕にしてしまいたい。

広げられる感覚に、

いっときのこうふくをあじわったようで。




前半はバイト中に激暇だったんでちまちま携帯でメモってたもの(おまっ
自分で言うのもなんだが、
とっても 痛 々 し い も の が出来上がった!
20090318


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