くあ、っと口を開けて欠伸をしてしまった。 これだから春ってやつは、 俺は涙の滲む目をしょぼしょぼと瞬きする。 ベンチの背もたれにずしりと体を任せて空を見上げた。微かに雲が霞む青い空を見上げた、 さらさら遠くで音がするのは、風にそよいだ桜の花びらだろう。 ひらひら散って、地面に降り積もり微かな音を立てる。 もう一つ、欠伸。 「ふぁ・・」 「ふふ・・」 くすくすと小さな笑いが聞こえたと思うと、空を見上げたままの視界に良く見知った顔が大きく現れた。 「わ、」 柔らかな栗色の髪が風にそよいでいる。 「春・・・?」 「こんな所でのんびりしちゃって、どうしたんですか?要くん」 にっこりと微笑みながら俺の隣りに座る春はいつものように穏やかに笑っている。 「ちょっとな、」 疲れたような笑い、と俺自身も自覚している。 俺の顔を覗き込んで春は困ったように笑った。 「まーた、悠太くんと祐希くんですか?」 「分かってるなら聞くなよな」 大きなため息をつきながら返す。 春も、そして例の双子も俺の幼少期からの付き合いで、つまり幼馴染みというやつだ。 正直あのわけの分からないことを言い出す悠太と祐希に良くまあ耐えていられるものだとも思うが、それはもう慣れと言うものだろう。俺たちだから奴等に付き合っていられる、と言う自負を持っている。多分、春も。 「お疲れのようですね」 おやまあ、そんな感じ。 考えてみればこうやって春と過ごすのも俺にとっては一種の癒しと言うものだ。 春のこの柔らかな雰囲気がささくれ立った心だとか感情だとかをやわらげてくれる。 春がいるから、ある意味俺たちは成り立っているのかも知れない。 「どうしたんですか、僕の顔何かついてます?」 じっと俺に見られていた春が居心地悪そうな顔で聞いてくる。 微かな笑みは消えているというのに、その滲み出す空気は癒し成分ばかりだ(と、俺は思う) 「いや、春と一緒にいると安らぐよなあー」 小さな笑いと、零れ出るような言葉に春は吃驚した様に目を見開いた。ぱちぱち何度も瞬きを繰り返している。 その微笑ましい行動に、だからいいんだよな、と再確認する。 「僕も要くんといると安らぎますよ」 にっこりと言われて今度は俺のほうが目を見張る。 「そうか?」 自分で言うのも何だけど、俺はどちらかと言うとちくちくと口煩いほうで安らぎとは正反対に位置するもんだと思っている。 「そうですよ、要君といると安心するんです」 でもそれ以上にね、と、春が小さく呟いた。 体をこちらに向けて、優しい目がじっと見てくる。 「ドキドキするんです」 聞きなれない言葉の後に、温もりが近づいた。 口の斜め上、頬に軽く触れたものは説明しなくても分かるだろう。柔らかい髪が擽った。 「じゃあ僕、もう戻りますね」 硬直したままの俺を置いて、勢い良く立ち上がった春はさっさと背を向けて駆けて行ってしまう。 「え、あっ・・・?」 ばちんっと音が鳴るほどの強さで頬に手をやる。 揺れる髪とだんだん小さくなる背中を眺めながら、俺は自分の顔が熱くなるのを感じていた。 春とともにやってきたのは、多分、おそらく、恋心 メル友と君僕のカプはなんだろー、と会話 ミ:あたしはモチ要っち受けですね!春だって要ちゃん攻めちゃうね! 友:えー春ちゃんは受け側でしょー と言う会話を経て春×要書いてみた!(いや、これは春+要でしょー?という声が・・・聞こえてくるような 20090508 novel |