お前に愛されていても微塵の嬉しさも感じない。 俺は波打つ鼓動、酷い倦怠感、軋む身体、そして酷い熱に魘されるように体中で大きく呼吸をしていた。 臭いを逃がすために窓を開けてあるがそれでも外の温度はあまり部屋とかわらず高いためいい事なんてひとつもない。 鳴き喚くせみの声が漏れ聞こえてきて煩わしいほどだった。 普段ならまあまあ快適、しかし今は狭くなっているシングルベッドに俺はうつぶせに倒れていた。 直接肌に触れるシーツが汗を吸っていて気持ち悪い。 そして、すぐ隣に座っている幼馴染の体温を感じて居心地は最悪を超えていた。 まだ息が切れる。 「大丈夫?」 俺とは正反対に涼しげで、整った様子の声が頭上から響いた。 ゆっくりと見上げると相変わらずの静かな表情(というか無表情)の祐希が見つめていた。 なんでこんなことになったっけ? 考えようにも思い出すのはその事の最中の強い印象の残っている記憶ばかりで 、きっかけが思い出せない。 まあ、あやふやだったんだ。 俺がそういうものを以前から望んでいたのかもしれないけど、どちらともなく、始まっていた。 じりじりとした熱気でくらくらする。 もういい、臭いも逃げた頃だろう、さっさと窓を閉めて冷房の電源を入れるべきだ。 「おい、窓閉めて来い」 「もういいの。自分が開けろって言ったのにね」 わがまま。 そう呟かれてやっぱり癇に障る。 結局、俺たちの間はたいした進展はなかったようだ。 身体を合わせてみても変わらない。きっと、この先もこんなふうに何があっても不変なのかもしれない。むずがゆい。 なら俺はいつまでもこいつを意識しなければいけないし、そしてこいつは俺をおちょくって、それでもなにもくれやしないってことか。 「暑いんだよ、冷房入れるから閉めて来い」 見てのとおり俺様は動けないんだ。そう付け加えてとりあえず起き上がろうとする。 しかし行為の後の脱力した身体は言うことをまったく聞かず立てた腕が砕けるように崩れた。 珍しく素直に祐希はベッドから抜け出し窓を閉めた。 俺は枕元に手をやりしばらく弄ってリモコンを探したがなぜかその目的の感触はいっさら感じない。 「どこだよ」 舌打ちとともに呟いた瞬間にピと音がしてエアコンが作動した。 「あれ?」 見上げた先の祐希は右手にリモコンを持ってエアコンに掲げていた。 シーツ以外に身を包める物が無い俺とは違い、祐希は上半身は裸のままだがいつの間にかしっかり下着を履いて草臥れたジーンズも履いていた。 しかしなぜかファスナーは下がったままだ。 趣味の悪い色と柄の下着が覗いてるのを見てうんざりとした。 それにしても良い身体をしている。 おたくのくせに・・・などと考えていると祐希は机にリモコンを置くとまたベッドにもぐりこんだ。 「なんだよ、さっさとどけ」 「いいじゃない、俺も疲れたしもうちょっと休憩ー」 触れそうなほど近くに寝そべった祐希が仰向けで俺を見つめてきた。 無遠慮な視線が忌々しい。 身を離そうと後ずさった瞬間に体内に残っていたものがだらりと外に垂れてシーツを汚した。 「・・・っ」 それはとろとろと、まるで締め切っていなかった蛇口のようにゆっくり、忘れそうになる頃に滴った。 「お前着けてなかったのかよ!」 嘆くように言った俺を祐希はなぜそんなに取り乱すのかと不思議そうに見つめていた。 きょとん、と横に首をかしげる。子供のようだ。 「だって、持ってこなかったし。要だってつけてないじゃん」 「マナーだろ!マナー!入れるんなら着けろよ!お前だって危ないんだぞ!」 激昂した俺をなぜそうなったのかわからないのか、やはり硝子玉みたいな何を考えてるのかわからない目で、そして言葉にならない質問を投げかけてきているようだった。 「もう信じらんねえ!あほ!」 力んだせいで祐希のあれがぎゅっと押しつぶされて急速に垂れた。 ちくしょう。気持ち悪い。 「止まんないね、」 俺のそこを無遠慮に見つめてくる。 羞恥でどうにかなりそうだった。 「いっぱい出しちゃったからね、」 「黙れ」 「なんか子供の一人や二人できちゃいそうだね」 「あほ!」 「愛してるって言ってあげようか」 戯れるような顔で祐希が言った。 言葉も出ずに凝視してる俺に祐希は笑った。 「愛してる」 「ねえ。要」 「ふざけんなよ」 「お前に(そんなふうに、)愛されても微塵の嬉しさも感じない」 嘘だ。 悦んでる癖に。 自答した瞬間に、祐希もそんな顔をして俺を見て、笑った。 嘘だ。 20080808 事後。 愛は無くとも行為は及べてしまう若気の至り。 でも受けの片思いが好きなんで要にはちょっと苦しんでもらいます(酷) なんか夏のじりじりした部屋と汗ばんだ肌とかものすごく萌える。笑 リモコンはベッドの枕元に置いてあったけど、行為が激しすぎていつの間にか落ちちゃった設定!w ちなみに、安里もエアコン・照明などのリモコンはベッドの枕元に置いています 他にもメモ帳、ペン、読みかけの本(多いときは十冊以上も!) おかげで腕を頭上に伸ばすことが出来る日は少ないです。 novel |