「来たか、ナルト。」 それとも禦侮と呼ぼうかねえ・・・妙齢の美しい女が笑いながら言った。 唯一の光源は窓から差し込むまあるく大きな満月の射す光。 「ばっちゃん。俺疲れてるんだけど・・・」 5代目火影である綱手姫を気安く呼び、ナルトは大きく溜息を付きながら言い、しかしその顔は得意げな笑みを浮かべている。 「分かっている。しかし今は人手不足でな。お前はとくにこき使ってやるぞ」 その綱手の顔をげっそりと見つめて、ナルトははいはいと言うように手を力なく振る。 「それでだ、任務の話だが。」 「あー・・・うん」 「お前は月の一族を知っているか?」 「よく聞く名だと思うけど」 一瞬の思考を経て、しかし思い当たる情報の多さにナルトは眉を顰める。 「まさか・・・その月を名乗る全てを根絶やしにしろとか言うんじゃ・・・・」 「・・・・・・。」 「・・・・・・。」 じっと真剣な顔で黙りこくっている綱手をナルトは窺うような気味悪がるような顔で見つめる。 「こんのアホが!!!!!」 怒声と共に気合の一発、幻の拳を見舞う。 「・・・・・・・・・・・・・・っ」 あまりの激痛にナルトは声も出せずに殴られた脳天を押さえうずくまる。 「・・・・・ばあちゃん・・・。それが里一番の稼ぎ手に対する仕打ち仕打ちなのかよ・・・!?」 いつの間にか姿を現した白い男が癒しの術を施す。 「綱手姫。いくら相手がナルトとはいえ貴方の豪腕で殴るのはいかがなものかと・・・」 「手加減したに決まっているだろ。」 「いいや、今は半分本気だった!絶対本気だった!」 いまだ涙ぐんだ目で綱手を睨みナルトが反論する。擁護するように白い男が包むように抱いている。 「手加減したと言ってるだろ!それに半分ってなんだ!?半分じゃ本気じゃないだろ!これだから最近の言葉といったら・・・・」 ぶつぶつと独自の文句を言っている二人を白い男はまあまあと控えめに諌めるが、しかし姿勢はナルト寄りだ。 その様子を綱手は鼻を鳴らして呆れたように半眼で見やる。 「・・・・・・。で」 「で?」 「月の一族のことだが」 「ん、ああ。」 一気に真剣味の増した綱手をナルトも気を取り直して真正面に見る。 その様子を見て白い男は一歩下がり控える。 「私が言いたいのは月の血を継ぐと言われている一族のことだ。代々月の血脈を継ぐと言う長の束ねる少数の一族らしい。」 「月の血脈・・・ね」 綱手の説明をナルトは口元に曲げた人差し指を当て瞳を細めて考える。 月の血の一族。 この世には不思議な能力を持つ血脈の一族は多いが、その中でも異質だと言われる一族だ。全ての法はその血に従い一族中で近親婚を繰り返し混じりけの無い血筋、しかし同時に酷く邪悪な血を受け継ぐという一族だ。 一族の長など、核とも言える者たちの素性は一切知られず、通り月と呼ばれる一族のほんの一部の者が他国や他の里との交渉役を荷っている。(しかしのそ通り月が姿を現すのもほんのわずかだ) 数多く存在する血継限界でも非公式な存在としてあまり知られてはいない。それでも長年闇から闇を渡り情報通でもあるナルトはこの一族についてのあまりに非道徳な話は良く耳にする。 「どんな能力があるかも不明。ただその血に重点を置いたイカれた一族だな。それで、その月がどうしたんだ?」 「月の長が何者かに消されたらしい。」 「・・・・・・・。」 一瞬の間に、二人の目がちらりと合う。 「だけどその長ってのはけっこうなよぼよぼじーさんだったんだろ?しかも色欲ばかりが絶大な。」 ふざけたように、しかしその目には色濃く嫌悪を映しナルトが言う。 「私も気に入らんがな。しかし一応同盟内の一族だ。無下にはできん。」 「ごーつくばりじじいを掃除してくれたやつを、今度は俺に敵討ちしろってーの?」 不満の滲んだ声で言い、ナルトはふいと窓の外を見つめた。 その様子を見て綱手は溜息を付く。と、後ろの方で白い男も優しげな顔に気疲れした色を見せているのを見て、なにやら不思議な感慨にふける。 そうだ。この男の方こそ、月の意には特に気が往くであろう。 「とりあえず、お前はその長を葬ったという者を追え。」 「・・・・。わかったよ。」 「元々あの月の血の者達は目の上のたんこぶ的なものだったらしいからな。けっこうあっさり済むかもしれないぞ?」 綱手はそう言って、苦い顔をしているナルトを楽しげに見下ろした。 火影の屋敷を出たナルトは表向きの自宅には向わず、人気の無い里の外れの豊かな竹林へと足を向ける。 広大な土地、その竹林に隠されたようにナルトが隠れ暮らす邸がある。 くつろぐことなくナルトは地下にある武器庫でクナイや手裏剣、起爆札など消耗品の補充をし、ホルダーに納めていく。 「ナルト・・・食事は?」 「あーいらない。このまますぐに出る」 気遣わしげな男の顔を居心地悪そうに見上げながらがりりと固形栄養剤を噛み下す。その間も体を休めることは無い。 姿を変え、普通よりやや長い黒い刀を背負い、ナルトは開いた天窓から夜空に舞い踊る。 「あまり心配させないでくださいよ?」 隣りにナルト共に飛び出し宙を舞う白い男が言う。 無理なんかしていない。ただがむしゃらに駆けるのが好きなだけなのだ。 「白月、」 「はい」 男がゆっくりと頷く。 「お前は情報を集めてくれ。俺はとりあえず月の住処に行く。」 つんと言い放つナルトを男はちらりと見つめ了承する。 「わかりました。が、どうか無理はしないでください」 「わかってるよ」 ナルトは男を見上げ、夜風をさらりと滑っている艶のある長い白髪をするりと指を絡まし流す。 男は気遣わしげに目を細めナルトを見下ろすが、すぐに諦めたように瞳を瞬かせ「では」と声をかけて姿を消した。 2007.9.16 白の読みは「しろ」です。 オリキャラの設定組み当てた後に、そう言えば本家に白(ハク)がいるじゃーんと気付きました・・・。 あたしのばかーん・・・・ 20080209 加筆修正。 ナルトが「白」と名を呼ぶところを「白月」に変更。 もうネタバレとかいいやーって気分になった(汗笑) |