逃げられない。


『甘い檻』



辛い、と心が叫んでいても。
彼から自分は離れる事など出来ないのだ。


「―――…旦那様」


低い、大好きな彼の声が耳に届く。
デーデマンは大袈裟なぐらいにびくりと身体を震わすと、小さく息を詰めてセバスチャンを見上げた。
深い蒼色の瞳が、愉しげにこちらを見下ろしている。


「っ、」
「何を怯えてるんです?」
「…ぅ……」


ぐっと腕を引かれ、椅子に身体を押し付けられた。
恐怖の為かヒクリと喉がなり、声にならない声が口から漏れる。


「ぅ、ャ……」
「旦那様」


握り締めていた手を無理矢理開かされる。
恐怖にひきつるデーデマンに、セバスチャンは更に笑みを深めた。










「ここまで、終わらせてもらいますからね」












涙が零れた。


「ぅぅ……無理だって」
「問答無用です」


ぐるぐると紐で手にペンを固定されながらデーデマンは滝のような涙を流す。
何日徹夜しなければいけないのかと書類の山をざっと見る、が。


「……ぼく、死ぬよ?」
「では死ぬギリギリまでして下さい」


自分が悪いとは分かってるけど。


「……ヒドイ」


あまりにもあまりなセバスチャンの言葉に、デーデマンはガックリと肩を落とした。































オマケ↓


数日後。







「もう、部屋に戻っても、いい…?」
「どうぞ」


やっと終わった仕事。
デーデマンは睡眠不足でふらふらとよろめきなが立ち上がった。
眠くて眠くて堪らなくて、直ぐにでもふかふかのベットで休みたいと思っている、のだが。



ゴンッ。



「……………」
「……何をしてるんです。旦那様」


数歩足を動かしたところで物にぶつかった。
セバスチャンの呆れたような声が後ろから聞こえるが、眠くて痛くてそれどころではない。
それでも痛みに堪えながらまた歩きだす、が。



ガンッ、ドテッ。



「………………」


またつまづいた。
しかも今度は自分まで転ぶ始末で。


「……旦那様」


更にセバスチャンに溜息をつかれたが、もう立ち上がる元気もデーデマンはなかった。
ので。


「おやすみ、セバスチャン」


その場でころりと転がった。
寝やすいようにスーツの釦を幾つか外し、小さく丸まる。
とにかく、自分は眠いのだから。


「何が“おやすみ”ですか」
「…………ん」
「全く……」


完全にその場で眠り始めたデーデマンをセバスチャンは抱き上げた。
口では何だかんだ言ってはいるが、デーデマンを見る瞳は優しい色を宿している。
気持ちよさそうに眠る彼に、セバスチャンもひっそりと笑みを浮かべた。


「―――…お疲れ様です。旦那様」


普段見せないような柔らかい笑みと、優しい口付け。

分かっているのかいないのか、デーデマンも幸せそうに笑みを浮かべていた。




結娜様のサイト一周年記念小説を掻っ攫ってまいりました!
甘い!これが甘やかし小説なのですね!!!!!
ああ・・・にやにやが止まらないーーー
うちとは違いラブラブでうらやましい・・・